平成28年の現在、一掌堂治療院に来院する耳関連疾患の患者さんの過半数がめまいの症状
を伴っています。10年前はめまいを伴う耳関連疾患はまれで、めまいと言えば高齢者の方
々に多い症状でした。ところが、現在は若い方を中心にしたあらゆる年齢層にめまいが見
られます。この現象はパソコンとスマホやゲームの普及と無縁ではないと思われ、「ITめま
い」と名付けてもよいのではないかという感想を持っています。 |
● 「めまい」とは |
自分や周囲が動いていないのに、動いているような感覚を総称して「めまい」といいます。 |
● 症状別「めまい」のタイプ |
現れる症状から大別して、めまいのタイプは3つあります。
@ グルグル回るめまい
自分や周囲の景色がぐるぐる回るように感じるタイプ。突然ぐるぐる回る激しいめまいが起こり、吐き気を伴ったり、実際に吐くこともあります。多くは、体のバランスを保つ耳の器官に原因があって起こるものです。
A フワフワするめまい
体がフワフワ、フラフラと揺れているように感じるタイプ。過労や睡眠不足、ストレス、不安が原因で起こることが多く、まれに脳の病気が原因で起こることもあります。
B クラッとするめまい
いわゆる「立ちくらみ」のことで、立ち上がった時にクラッとしたり、目の前が暗くなるタイプ。脳の血流量の一時的な低下が原因といわれています。
3つのめまいのタイプで、おおよその原因を推測できますが、いくつかのタイプが混ざりあった形で症状が現れることもあります。 |
● 原因疾患別「めまい」のタイプ |
@ 神経性めまい |
中枢性めまい
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脳梗塞や脳出血等、脳の疾患からくるめまい。フラフラすることが多い。 |
末梢性めまい
(耳の病気からくるめまい) |
耳鳴りと難聴を伴う内耳性のめまい(メニエ ―ル病、突発性難聴、外リンパ瘻等)と、他の症状を伴わない前庭性のめまい(良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎等)があり、回転性のめまいが主ですが、フラフラしたりクラッとするような場合もあります。 |
A 循環器性めまい |
一過性血圧高値 |
フワフワ、フラフラとした感じや、後頭部の頭重感を伴うめまい。 |
起立性低血圧 |
急に立ち上がった時に起こるクラッとするめまい。 |
B 全身性めまい(フワフワ、クラッとするめまいが主) |
心因性めまい
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過労、睡眠不足、ストレス、不安からくるめまい。 |
その他 |
自律神経失調症、甲状腺機能低下症、薬の影響によるめまい。 |
● 「めまい」への対処法 |
- めまいは心身のSOSの一つととらえ、生活と仕事の改善を図ることが大切です。 仕事と生活のどこに無理があるかを見つけて改善する必要があります。
一掌堂治療院では、「MMT(めまい記録療法)」で患者さんの心身のどこに無理がある か探ります。手法は「MMT(耳鳴り記録療法)」をご参照ください。
- めまいを起こしやすい行動を避けるようにしましょう。
「ITめまい」は、パソコンやスマホ、ゲームのし過ぎからくるものと推察されます。画面を目で追う作業を長く続けないようにして、不安を感じたらすぐに目の動きを止めましょう。めまいの時は目が小刻みに動く眼振が現れ、目をロックするとめまいが防止で きることもあります。エレベータや電車の中など動くところでのスマホの使用を避ける こと、症状のある耳を下にした姿勢を取らないこと、症状のある耳の側に首をねじらな いこと等の工夫によって、めまいを防止できることがあります。
詳しくは「めまいの方に避けてほしい行動」をご参照ください。
- アクアウオーキング療法(水を飲み、歩くこと)のお勧め。
耳からくるめまいの原因は内リンパ水腫(内耳が水ぶくれになること)といわれており、その解消法のひとつとしてお勧めしています。詳しくは「アクアウオーキング療法」をご参照ください。
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● 「めまい」の鍼灸治療(耳の病気からくる「めまい」の場合) |
基本は突発性難聴の鍼灸治療(横向きでもみほぐし→仰向けでもみほぐし→横向きでハリ) と同じです。もみほぐしを10分から15分、その後ハリをします。ハリを置く時間は0分 〜20分です。治療シミュレーションをご参照ください。
めまいを起こしているとき、あるいは起こすリスクがあるときは、各種の対応をします。 |
- 前額部や側頭部、頭頂部をアイスノン等で冷やしながら施術を行います。
- 嘔吐の可能性があるときは吐瀉袋を用意します。
- 横向き→仰向け→横向きで無理な場合は横向きだけで施術をします。一般的には症状 の出ている耳を上にしたままでハリをしますが、状況に応じて症状のある耳を下にした まま施術をすることもあります。その場合は、下にした症状のある側の首と肩背中と反対 側の症状のない耳の治療をします。(巨刺法)
- 横向きになれない人には、仰向けだけ、もしくはうつ伏せだけの施術を行います。
- 横になるとめまいが起きる方には座ったままで治療をします。
- もみほぐしや押す代わりに、軽擦法(さする)を選択することもあります。 FBTT(腰のほうから頭のほうにむけての軽擦法)が効果的です。全身軽擦法と頸部軽擦法があります。めまいの程度により選択します。
- ベッドで起き上がるときにめまいを起こす可能性に対する予防策としてERC(眼固定カード)を壁に貼り、目をしっかりロックして起き上がっていただきます。 。
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眼固定カード (ERC) |
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以上の「めまい」への対処法と「めまい」の鍼灸治療で、めまいのために一人で来院できな かった方も一人で来院できるようになっています。重症の外リンパ瘻でめまいが治まらな いような場合には手術が必要になることがあるので、病院に紹介しています。 |
● 鍼灸治療が適さない「めまい」 |
モノが二重に見える、手足や顔のしびれやマヒが体の片側に出ている、ろれつが回らない、努力しても立つことができない、激しい頭痛を伴う、意識がもうろうとしている、後頭部の首の付け根に激しい痛みがある、といった場合は鍼灸治療が適しません。 すぐに救急車を呼んでください。 |
● 「めまい」が起きたら |
鍼灸治療が適さない「めまい」以外の場合では、慌てず、楽な姿勢で横になり頭を少し高くしてアイスノン等を使って冷やしてみましょう。部屋を暗くしてアイマスクなどをすると良い場合もあります。吐き気を催すこともあるので、洗面器等を用意すると安心です。 一般に、2〜3時間で症状が治まることが多いようです。 |