機能性難聴とは、外耳、中耳、内耳,蝸牛神経、脳幹に明らかな障害(器質的障害)がないにもかかわらず、聴力検査で聴力低下がみられる難聴のことを言います。機能性難聴は一般的には心因性難聴と同じように考えられますが、厳密には心因性難聴と詐聴(さちょう)とヒステリー難聴に分かれます。
詐聴とは、実際聞こえていても難聴を装う難聴のことです。何年か前に全聾の作曲家が実は詐聴だったかもとかで、話題になりました。身体障碍者手帳を得たいとか、金銭面のメリットを得たいとか、労災の診断書を得たいとかの動機があるようです。鍼灸院に来られることは皆無です。
ヒステリー難聴とはヒステリーが原因の難聴のことで、ヒステリーを起こすと何も耳に入らないという難聴のことです。
心因性難聴は機能性難聴と同じ意味で使われることもあるようですが、厳密には精神的なストレス(心因)が明らかである機能性難聴のことを心因性難聴といいます。
以後は、心因性難聴について続けます。
●心因性難聴の原因
学童期の女児に多いことが知られており、学業や友人関係でのストレス(勉強の遅れ、クラスのいじめ、クラブ活動)、家族におけるストレス(両親の離婚、兄弟間の比較など)が原因となることが考えられます。学校を卒業して社会に出たばかりの人にも見られるようです。
●症状
聞こえないと訴えがあり、聴力検査で、難聴が観察されながら、形態学的な検査や聴覚検査を行っても、原因を特定することができません。また、検査を行うたびに耳の聞こえの程度が大きく変動することがあります。耳の聞こえの低下以外にも、耳鳴りや耳の痛み、めまいを伴うこともあります。うつ症状や不眠の症状がみられることもあります。
●検査診断
耳の診察や通常の聴力検査に加えて、他覚的に聴力が測定できる特殊な検査をします。
耳音響放射検査(OAE) |
内耳の外有毛細胞と呼ばれる、聞こえに関する感覚細胞の反応について検査します。イヤホンを耳に当てて音を聞いていただくだけです。ボタンを押したりせずに機械が反応を検査します。 |
聴性脳幹反応(ABR検査) |
蝸牛神経やそれより中枢側(脳幹)の聴覚伝導路の機能を調べる検査です。ベッドに横になり、ヘッドホンから出る音に反応して出る脳波について検査します。これもボタンを押したりしなくて機械が反応を検査します。 |
聴性定常反応(ASSR) |
耳からの音刺激に対する反応脳波の微弱な電流を記録、解析し、聴力を推定する検査です。この検査も被験者の応答を必要としないので、詐聴等の機能性難聴の検査にも利用されます。 |
●心因性難聴の病院の治療
基本的に耳の治療や投薬はされないようです。生活の改善や工夫を勧められる場合もあります。心療内科や精神科や鍼灸院を紹介されることもあります 。
●心因性難聴の鍼灸治療
器質的な疾患がなく機能的な疾患は鍼灸治療の最適応症です。
病院から「心因性難聴なので治療をおねがいします」と「診療情報提供書」とともに ご紹介で来られることもあります。完治率も大変いいです。
鍼灸治療は「病気を診ずして、病人を診る」といわれ、機能性の症状にはとても適応します。 治療に時間もたくさんかけて、ゆっくりお話をお聞きします。何回かゆっくりお話をお聞き しながら治療を続けていきますと、そのうち、心の扉が徐々に開いてきて、あるときに全開 し、聴力も突然完全に復帰します。治療には自律神経調整や不眠対策も並行してすると効果が 出やすいようです。
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